椅子からストンと降りた私を見て、彼は僅かに目を見開いた。
年はあんまり変わらないような気がするけど、この体だから薫お兄ちゃんと呼ばせていただこう。
そして心の中では、君付けで!
「いつもおいしいごはん、ありがとうございましゅ。ここのごはん、とーってもしゅきっ!」
「……そう」
あらら。そっぽを向かれてしまった。
すると、上からクスクスと笑う声が聞こえてきた。
顔を上げると、綾芽が口元に手を当てて笑っている。
「ほんま素直やないなぁ。薫は普段は礼を言われるようなことないから、照れてるんよ」
「ふぅーん。じゃあ、あしたからまいにちわたしがおれいいいましゅ!」
「……っ」
「あらら。これじゃあさっきと立場が逆なったわ。ほら、薫。えぇ子やろ?」
ご飯を作ってくれる人にお礼を言うのは当然だと思うんだけどなぁ。
だって餓死するよ? いや、笑えないって。
とりあえず、今は食べれないパフェをもう一度作ってもらうために、幼児の無償の笑顔を振りまいておこうと思います!
「……またおやつの時間においで」
「あいっ!」
おやつの時間! その手があったか!
あのパフェは冷蔵庫の中にしまって置かれるらしい。
その容器で入るのかは分からないけど。
「じゃあお散歩いこか」
「はーい」
定番となりつつある食後のお散歩、その後お昼寝、それからおやつ。
完璧な幼児のタイムスケジュールでございますがなにか?
「かおるおにーちゃ、またあとでね」
「ん。気をつけて行くんだよ」
「あい」
なんだかまた保護者が一人増えた予感です。
同じくらいの歳だろうに。とほほ。
でもまぁ嫌な気はもちろんしないけどね。
というわけで、綾芽と一緒にお散歩いってきます。



