『そう』



自分に向けられた声はそれが最後だった。

自分はただ角野先輩に迷惑をかけたくない。

それだけを思っただけだったのに、逆に先輩の機嫌を損ねることを言ってしまったらしい。

同じ職場であるだけにとても気まずい。

当たり前だがお互い、他の人とは今まで通り何も変わらず接することが出来ている。

しかし、自分と先輩が会話する時はお互いに、他人行儀の様になってしまう。

会話の内容は仕事の用件のみ。

姿を見る度すれ違う度に、謝れば少しは受け入れてくれるのだろうか、とも思った。

何度も何度も先輩に声をかけようとした。

そんな自分にきっと気付いてはいるはず。

でもあえて反応をしない。

それどころか指示以外、言葉を交わしてくれない。

一体何が先輩のカンに障ったのかわからないけれど、一言でそこまでしてくれなくったっていいじゃない。