今日もまた先輩に叱られる。
「いい加減、覚えて?!教える身にもなってちょうだい!!」
「すいません」
「何がすいません?すいません、すいません謝っとりゃすむと思っ…」
「まあまあ。あんま怒ると、体力もちませんよ、おばはん?俺、指導しとくで、任せといてぇや」
「なっ?!」
「ほら、ちょっと休憩しといーや」
「じゃ、じゃあ任せるわ…」
「はいはーい」
誰だろう。
なんかこの人、見た目が恐そう…。
髪型、オールバックだし。
びしっと決めたるでっ!、て感じだし。
自分の先輩に対しての第一印象は、最悪と言ってもよかった。
「んで、華ちゃんやっけ?」
そう言って、徐々に近づいてくるオールバック先輩。
さっきの「指導しとく」って言うのは、きっと覚えの悪い自分をどつき回すということに違いない。
下を向いていてもオールバック先輩の足の先が見える程に距離が縮まった時。
自分は、覚悟を決めた。
顔面に…いや、吹っ飛ばされない様、全身に全力で力をこめた。
が、いつまで待っても衝撃はこない。
恐る恐る片目を開けると…
「どうしたん?」
「ぬわぁっ!!」
いつの間にか顔を覗き込まれ、オールバック先輩の顔がどアップになっていた。
その状況に思わず、マヌケな声と共に後退りした。
すると、とうとうオールバック先輩が片手を上げ、今度こそ殴られる、と防御態勢に入る。
「可哀相に。相当おばはん等にいびられたんやな」
そう言いながら苦笑いするオールバック先輩の手は、包む様に自分の頭の上に置かれていた。



