幾つもの年月が流れ行き、小さな足音が元気な声と共に、家の中へ入ってくる。 自分は、自身の物ではないワイシャツに、アイロンをかけていた。 「お母さーん」 自分を示す名詞を呼ばれ、手を止める。 「おかえり。どうしたん?そんな顔して」 「聞いて!同級生のけんたくんが、私の髪の毛を引っ張ってくるん」 「なんで、そんなひどいことするんやろな」 「もう、きらーい」 小さな紅葉のような手が、何度も床をペシペシと叩く。 「嫌やと思うんやったら、言わな。やめてって」 「でも…」