『華ちゃん、おはよう!』
『おはようございます』
『どうしたん。なんか顔が華やかやで』
『え、特に何もしていませんが…何か、いつもと違いますか?』
自分が問うと、先輩は少し首を傾げた。
『何か…違うんやって。何やろな…なんか表情が明るいんかな。いつもより軽い感じ』
言い出しっぺの先輩も、わからないそうだ。
そして、唐突に先輩が尋ねる。
『何か良いこと、あったん?』
それを問う、先輩の表情を窺うと、ただ純粋に質問をしているわけではなさそうだ。
その表情は、既に頭の中に用意した返事を、待っているようにも見える。
『例えば「栗山くん」のこと、とかですか…?』
『お、やっぱりなんか、あったんやな!』
先輩はそう言って笑うが、少し無理をしている。
それが、今までに自分がしてきたことが正解だったのか、ということを惑わせる。
『…付き合うことに、なりました』
『良かったやん』
『すみません…』
『なんで、謝るん』
お陰様で、なんてとても言えない。
何とも、上手く話せない。
それだから、謝罪がぽろっと出る。
沈んだような自分の表情を、先輩は見逃さなかったらしい。
『そりゃ、素直には喜べやんよ。例えるなら、大事な娘を見守ってきた、父親の気持ちや』
腕を組んで、染々と言う。
『何て言ったって、華ちゃんの成長をこの目で、見てきたんやからな。本当に変わったよな、華ちゃん』
『…ありがとうございます』
角野先輩は、確かに今度こそ、素直に微笑んでくれた。



