内実コンブリオ


自分の言ったことを、気持ちを受け止めてもらえた。

もはや、声を出すことにすら、躊躇してしまう。

ただ、頷くことしかできない。

二十数年間、この人生を歩んできて、生れてはじめて己の気持ちの伝え方を知った。

伝えるということは恐くて、苦しくて、心臓がいくつ有ったって足りない。

だけど、伝わったなら、ひどく安堵する。

こればっかりは、涙が止まらない。



「ちょ、何で泣くの?!」

「あ、な、何だか、安心して…ごめんなさい」



自分は鞄からハンドタオルを取り出し、顔を覆った。

真っ黒な視界の中で、一生懸命に次から次へと、流れてくる涙を抑えようとした。

そうすれば直ぐ、隣から椅子を引く音が聞こえる。

大きな、暖かい手が背中をさすってくれた。



「だから、謝らなくていいよ。ありがとう…すげー嬉しい」



胸が、締め付けられた。

ぎゅーと胸の中で、音がする。

これは、自分が喜んでいるということ。

自分の気持ちが、だんだんわかるようになってきた。

今、自分、本当に嬉しいんだ。

目の前で人が泣いていると、戸惑って何も出来なくなる自分なんかとは、やっぱり違う。

まるで、それをすることが決まっているかのように迷うことなく、栗山くんの温もりがここにある。

自分が涙もろい人間だということを、たった今になって思い知らされた。