「華…?」
扉を開けた森緒ちゃんの方こそ、少し驚いている様子だった。
「えっ…大丈夫?」
森緒ちゃんは扉を静かに閉めると、自分の方へ戸惑いながら、ゆっくり歩み寄った。
自分の前まで辿り着くと、どこからともなくハンカチを取り出す。
それを自分の頬のあたりに当て、涙を拭いてくれた。
「何か、言われたん?角野さんに」
いつものハイテンションとは違い、とても落ち着く、そんな声で接してくれた。
気を遣ってもらうほど、表に出して落ち込んでいる自分に、今はひどく呆れた。
ただ情けなく思う。
「なっ、何も言われてな、い。う、うまく、話しも出来たよ。大丈夫。ありがとう。本当に、大丈夫だから…」
ああ、せっかく押し込めた涙が。



