自分が何かしらを返す前には、既に話し始めようとしていた。
自分には、聞かないという選択肢はないのに。
「『栗山くん』ってさ、野球部やったんやろ?」
「はい。そうですけど、それが何か…」
すると、角野先輩はニッと笑った。
「俺、学生時代、野球部、大っ嫌いやったんさ」
この話題の脈絡は『栗山くん』から来てはいるのだろう。
けれど、自分は内心何故かしら、冷や冷やしていた。
「俺、中学、高校、大学とサッカーしとってな」
「なんだか…らしくないですね」
「ちょっと!どう意味や!まあ、ええけど。
でな、俺の行く学校の野球部、みんな坊主頭が原則で、軍人みたいに常日頃から当たり前のように、声を揃えて生活しとって…声はでかいし。
確かに規律正しいのはええことやけどさ。でも、さすがにそれはやり過ぎちゃうか!って思うことがしょっちゅうあったな。
誠実すぎて、正直、気味悪くて野球部の連中は、苦手やった。
サッカー部もそういうのあったけど、あっちのが遥かに上。比べ物にならん」
「自分は…そういうの少し、素敵だと思います。…た、確かに、やり過ぎはちょっと呆れますけど」
「やろ?でも、そっか。華ちゃんはそういうの見て、素敵やって思うんか。何か納得やなー。誠実そうな人、確かに好きそう」



