「いろいろ…ありがとうございます」
「別に礼を言われることでもないで」
「いえ、本当に…というか先輩…」
「ん?」
「一体いつなったら、手…」
未だに、自分の手の上に先輩の手が重ねて置かれ続けていた。
「やっぱり若い子の肌ってええなぁ」
先輩は置いていた手で、撫でる。
これこそ、明らかなセクハラだ。
それでも、自分が呆れつつも許せた理由は、顔がいやらしくなかったから。
何だか、とてものほほんとしていて、先輩の顔の周りに可愛らしいお花が舞っているのが見えたからだ。
「スベスベやん」
「角野先輩だって、まだ若いじゃないですか」
「確かに、心は少年やけどさ。そういうのは、おばちゃん連中に言うたって」
「えぇ…」
至って普通に会話ができている。
信じられないけど、現実。
先輩も自然な表情で、むしろ前より話ができているような気がする。
実感を噛み締めていると、先輩が唐突に話題を変えた。
「なあ、俺がフラれた理由ってさ『栗山くん』?」
自分は思わず、目を見開いた。
この人は何でもお見通し。
「なあ、ちょっと聞いてくれやん?」



