「俺に、断る相手にそんな気ぃ遣ってくれるんやな。なんか、ありがとうな…」



それに対して、何も言えなくて、口に出したら、いろんなものが溢れしまいそうで。

自分は、無言で首を振った。

角野先輩は自分から目を逸らすと、深い溜め息を吐いた。

その溜め息に思わず、自分の体は一瞬、強張る。

そんな自分の様子を横目で見た先輩は、どこか微笑んでいるような表情で息を吐く。



「はあ、やっぱり華ちゃんは、優しいんやな」



そんなことは、決して無い。

人を傷つけることしか出来ないから。

自分は、また首を横に振る。



「なんで、そんなに首振んの?俺はむしろ、感心しとるんやで?だってさ、華ちゃんに珍しく、どストレートに言ってきてくれたやん。付き合えませんって」

「すみません…」

「だから、別にいいって。かなーりショックではあるけどさ。
…知っとる?やんわり断られると、男は傷付くもんなんやで」



自分は「傷付く」というワードに反応して、角野先輩の目を恐る恐る見る。



「大丈夫。俺、傷付いてはないでな!今は意外とスッキリしとる」

「本当、ですか…?」

「本当、本当!」



そんな辛そうに笑わないで。

相手は、たかが自分なのに。



「なあ、華ちゃん」



自分と目を合わせようと、先輩は少し覗き込むように、こちらを見た。