「荷物はどこに置いたらいい?」

「そうやな…自分の部屋に運んで」

「はーい」



自分の部屋の扉を開けると、そこは物置と化していた。

いや、出ていく前とあまり変わっていないか。

自分の後ろから、母親が顔を覗かせて言った。



「ちょっと、あんた。この部屋、片付けてよ」

「せっかく帰って来たのに、それ?」

「せっかく帰って来たから、こそやろ」

「…少し休憩したら始めるから」

「そう言ってあんた、結局しやんやん!」

「本当にするから!」



しばらくの間、外に縛られた愛犬の元へ逃げ込んだ。

その後、祖父と雑談をして、しばらく時間をおいた頃。

不意に何故かしら片づけ、整理をしなくては、と思った。

再び、自分の部屋に戻る。

昔の漫画やCD、ノートやファイル。好きだったキャラクターのぬいぐるみ。昔、バイト先でもらった特撮ヒーローのポスター。

中学、高校で使っていた諸々の物。

それらが無造作に置いてあり、あの頃は遠い昔であることをしみじみと実感させる。

いつまでも昔のものを整理できずに居るから、次に進めないんだ。

そんな当たり前のことを思う。

進みたい。

その思いで、淡々と片づけを始めた。