内実コンブリオ

お互いに電話口で別れの挨拶を告げ、電話を切る。

耳が、一気に静かになる。

あの人は、本当に生き生きと話す。

人間らしい。

自分だって、人間には違いないはずだけど。

彼の軽やかな口調には、ついていくことだけで必死になる。

一生懸命でないと、ついていけない。

でもそれは、不思議と嫌じゃない。

もしかすれば、今度こそ落ち着いて、あの事を聞けるかも。

これは、きっとリベンジ。

前回のリベンジ、というのなら「結菜ちゃん」のこと、今度こそ自分は聞けるのかな。

また、怖気づいたりしないかな。

また不安を感じている。

こんな自分が、いつか落ち着ける日なんて、来るのだろうか。

思うだけでいるなら、どうにもならない。

だから、そんな日が来るように、手繰り寄せる様に、自発的に動いていかないと。

なんだか、仕事みたい。

人生、トータルでそういうことなのかも。

仕事だって、人間関係だって。

自分に縁のないはずだった、恋だって。