「…あの、先輩。すみません。離れてください…」 すると、先輩は案外、簡単にどいてくれた。 「で、えっと、すみません。話って…」 「特に何もない…」 「え?」 「また、後で。お疲れさま」 そう挨拶した先輩は、静かに去っていった。 珍しく静かで、むしろ恐ろしい。 まるで、台風の目だ。 一体、何だったのか。 心なしか去っていく先輩の背中は、元気がなさそうだった。