「今は、そんなこと言うとる時間とちゃうやろ!ちゃんと仕事せぇ!!」



俺が少し大きく言ったはずやったのに、森緒は少しも動じやんかった。

それどころか、むしろ駄々っ子が駄々をこね出す前のような表情になった。



「そんなっ、ちょっと答えてくれれば、いいだけじゃないですかぁ、角野さん!」

「ああ、もう!うるさい!ええから仕事しろ言うとるんや!!」

「なあ、なあ!好きな子に無視されたら、淋しい?なあっ、淋しい?!」

「淋しい!!」



ああ、また折れてしまった。

こいつには、敵わんわ。

そもそも俺が微かに感じとることを、さりげなく聞いてきよった。

そう、俺は最近、華ちゃんに放置され気味や。

朝の挨拶や、ちょっとした仕事の用件で顔を合わせたりすることはある。

でも、それ以上はない。

おまけに、帰る前に最近は、森緒とよく話をしとるらしい。

現場を何回か目撃した。

そのせいで、俺のことは最近、ほったらかしや。

いや、もしかして、これは森緒の戦略なんか?

じゃあ、俺だって、積極的に話しかけていかなあかん、ってことやん!

そんな簡単なこと、なんで今まで気付けやんかったんやろ。

思い立ったら、すぐ行動や!

横で騒ぐ森緒を無視して、気分良くパソコンに向かって、作業を再開した。