「はい。これは深呼吸です」
自分がそう言うと、静かに微笑んでくれた。
そのゆとりある笑顔に支えられ、心を落ち着かせることが出来た。
よし、頑張ろう。
そう思った時、背後に人影が。
「咲宮さん。ちょっといい?」
人影は、いつもの女性社員さんであった。
「この書類のコピー2部とってきて。で、1部は、私のところに。残りの1部は、書庫にこの書類関係のファイルがあるから、それに挟んできて。あと、昨年度の製品カタログも探して、持ってきてくれる?あとは―
とっても長い女性の上司の注文を受け、少し気が滅入る。
メモを取らなければ、覚えることが出来ない。
確かに自分で書いたメモだが、後で自分が読めるかわからない、新聞記者並みのメモを手に立ち上がった。
その時おじ様が、自身の顔の前でこぶしを握り「ファイト!」とジェスチャーしてくださった。
自分は、それに控え目なお辞儀を返した。



