そんな経験させてくれた人が、たった今、隣でハンドルを握っている。
もう二度とあんな思いはごめんだ。
いい人ということは、知っている。
それなのに、実はそんなことを思って、顔色を窺がいつつ、接している。
最近になって、自分も気づいたばかりだ。
この人と関わる時、いつの間にかビクビクしていたらしい。
これには、自分自身も驚いた。
「なあ、なあ」
驚いた。
思わず、跳ね上がってしまった。
その一部始終を先輩に見られてしまったようで、クスッと一つ洩らされた。
それに恥ずかしく思い、顔が熱くなる。
また変な奴だと、思われたに違いない。
「あのさあ、今週の休みの日、空いとる?」
不意に聞かれた質問に、硬直する。



