『男は頼られてなんぼだろ。奢らせろよ』 

『頼ると奢られるは違う。大体、奢るって、その上から目線は何なん?!』

『素直に聞けよ!可愛くねぇなぁ!!』

『ほんとに何なん?従わせようとして…!最低やな!女、なめとんの?!』



口論が加速していく。

周りの客の迷惑になるレベルに達してしまった様で、店員が仲裁に入った。

その直後に森緒ちゃんが言い放った言葉で、その場が一気に静まり返ったと言う。



『そういう男、大っ嫌い!!』



彼氏は黙り込んだまま、外に出て行ってしまった。

彼は学生なので、自分の車は持っていないため、いつも通り森緒ちゃんの運転で、彼の自宅まで送る。

帰りの車内は、終始無言だったらしい。

彼の自宅前に到着し、車から降りる時の彼の言葉は『御馳走様でした』だった。

その言葉には、あまりにも皮肉を込められているようにも感じた森緒ちゃんは、返事もせずに車を発進させた。

彼の態度に納得がいかず、腹を立てていた。

しかし、不思議と零れてくるのは、涙。

森緒ちゃんの内心の半分以上は、何故あんなことをいってしまったのだろうという、後悔と自分への苛立ちだった。