森緒ちゃんのその瞳に影響されてか、思わず、自分の目にもじわじわと水分が押し寄せてくる。
まだ内容も知らないというのに。
「あのな…一昨日の夜、外食に行ったんやんか。でさ、いっつも私が支払いすんの。まだ、あっち学生やし」
「…え?」
「やから、いっつも私がお金、払うの。まだあっちは学生やから」
「…え?」
森緒ちゃんは未だご丁寧に、同じ台詞を反復してくれている。
何度、繰り返されても、驚く回数が増えていくだけ。
森緒ちゃんの彼氏は…かなりの年下?!と。
「彼氏、ラグビー部なん」
「ら、ラグビー…」
通りで、あの体格のはずだ。
気が付けば、二人から涙は、跡形もなく消え去っていた。
「まあ、そこはいいから。いつも通り、私がレジに支払いに行ったんやんか。そしたら…」
逸れつつあった話は、ようやく本題に乗った。
しかし、まさかの衝撃の事実の発覚で何だか、集中力をうまくコントロールできるか、とても微妙だ。
そんなこんなで、森緒ちゃんの話は、改めて始まった。
場所は、お手頃なオムライス専門店であったそうだ。



