その日の放課後。

部活がもうすぐではじまると水川、太田、俺の3人が部室前に集合した時のこと。

突然水川が話しがあると言って、バックネット裏に連れてかれた。


「栗山さ、俺少し前からおかしいなー、おかしいなーと思ってたんだけどよ…」



なんだこいつは。

どこぞの怪談でも話そうとしているのか。



「栗山さ、お前まさかとは思うけどよ…」

「なんだよ。早く言えよ」

「…咲宮 華のこと、好きなのか?」



いつの間にばれたんだ。

俺はその突然の水川の問いに思わず、声が出そうになった。

その様子を見た水川と、そこにいた太田にまでばれてしまった。

まずい…

この状況は非常にまずい。

何故だかはわからないが、俺の本能がそう叫んでいる。



「いつからだよ?」

「…お前らには関係ねーだろ」

「うーわ、こいつ否定はしねーんだ!」

「太田は黙ってろ」

「すんませーん」

「で、いつから?」

「…最初っから」

「最初っていつだよ」

「あー、めんどくせぇ。どうでもいいだろ」

「よかねぇ」



なんでこいつは、さっきからこんなに俺の話題に突っ込んでくるんだ。

気味が悪い。



「そうだ。面白ぇこと、思いついたわ、俺」

「は?」

「お前、咲宮 華に告れ」



こいつは何を言っているんだ。

告白なら、言われなくともいつかはしようと心に決めている。



「俺が言えって言ったタイミングでな」



きっと、ろくでもないタイミングだろう。



「やだね」



そうして、俺はその雰囲気が堪らなく厭になり、2人から離れてウォーミングアップを1人ではじめた。



「あいつ、本気なのかよくわかんねーな」

「おう、わかんねー。つーか、あんなん本気で好きになる奴おんなら見てみてー!」

「ほんとにな。とりあえず栗山に告らせたら面白そうだな」

「…でも、もし栗山、あいつ本気だったとしたら…」

「んなことある訳ねーって。明日、楽しみだな。ククッ」



水川と太田のこんなうっとうしい会話がまだ続いていることを俺は知らなかったし、興味すら持たなかった。

だって、俺だけの秘密だった。

誰にも知られたくなかったってのに。