通勤電車に揺られた後、冷たい風に吹かれながら、いつもの道を歩く。

明日からマフラーが要るかな、なんてことを考えた。

見慣れた建物と冬手前の空を仰いで、敷地内に足を踏み入れた。

ふと目線を変えると、駐車場から見慣れた人物が、車から降りるのが見えた。

あの人とは、いろいろ気まずい状況が続いている。

前回の森緒ちゃんの発案「お茶運び大作戦」でお互い和めた様な気はしているが。

自分はその後に、とんでもないことをやらかしているため、何とも言えない。

相手がこちらに気がつき、顔の横で控えめに手を振る。

その表情とはいつかに見た「見慣れた」満面の笑顔だった。

あまりにも嬉しい気持ちと、どこか懐かしい思いが入り交じる。

思わず駆け寄り、おはようございます、と深くお辞儀をした。

おはよう、と返してくれた角野先輩の笑顔に安心した。