内実コンブリオ

そもそもまだこの人と、親しいわけではない。

…あれ、そういえば自分、まだこの人の名前を知らない。



「あの「よし、わかった!角野さんにお茶を持ってって、さりげなーく会話してらっしゃいっ!!」



この人とは、本当によくタイミングが揃う。

気が合っている、とは言わなそうだけど。

背中を強く叩き、そして、押された。

彼女の顔は、何故か自信有り気に笑みを浮かべている。

こうして先程自分で掘ってしまった墓穴に、さらにはまっていくのであった。

ちなみに墓穴とは、この場面の場合、この人に聞かれたことを上手くごまかせなかった、ということだ。

結局、自分は彼女の案にのせられ、それぞれお盆の上に湯呑みを三つずつのせた。



「これならさ、不自然じゃないやろ!」

「うーん…」

「納得いかんのかー?」



こんなことをしても、正直意味が無いのではないか。

そんなことを思うのだ。

どうせ今の調子じゃ、口を聞いてもらえるはずなど無いのだから。

溜息まじりに、給湯室を二人で出た。