七月の終わり、私は高校の授業をずる休みし少し早めの夏休みを過ごしていた。そうして早々に、母方のおばあちゃんの家に遊びにいくことになった。おばあちゃんの家までは車で二時間。草花に恵まれた小さな川や古民家が並ぶ静けさのある場所だ。お父さんの運転する車の窓から空を眺めると、雲がぐんぐんついてきて木々も流れていく。私は窓を少し開けて、土の匂いを含んだ冷たい風に当たってひと眠りした。

 おばあちゃんの家についてからは、大きくなったね、とお決まりのやり取りをして、荷物を運んでからそうめんを食べた。缶詰のみかんやサクランボウののった、宝石箱のようなそれはおばあちゃんの家でしか食べられない。それと、おばあちゃんの庭で穫れた野菜の天ぷらとゴーヤーチャンプルーも食べた。茄子の天ぷらがあんまり大きいから食べるのに苦労していたらお父さんが、

「桜子、おばあちゃんに成績表を見せたらどうだ。」

と笑いながら言った。私は和室に置いていた鞄の中から成績表だけ引っ張り出すと、おばあちゃんに渡した。

「桜ちゃんは相変わらず古典が得意なのね。」

とおばあちゃんはにこにこ笑って褒めてくれた。私は何だか恥ずかしくて下を向いてそうめんを頬張った。