蒼大さんの手が私の頬を撫でた。


「一花、泣いてる。」

「えっ?」

「泣いてる。」


優しく拭ってくれる手は怒りなんて感じない。ハワイで私を包み込んでくれていた優しい手だ。


「ごめんなさい。ずっと謝らなければって………、ずっと後悔してた。」

「そうか。」

「嘘をつかないと……私の心が傷つけられると思った。」


優しい手が何度も頬を伝う涙を拭ってくれる。


「『ひとときの恋』だと言い聞かせないと……私が傷つけられると思った。」

「俺が本気だと知ってた筈だろ?」

「それでも、旅先でのたった一週間だけの恋なんて続かないと思ってた。本気なんてあり得ないって。」


頬を撫でる蒼大さんの手を掴み、真っ直ぐに見つめる。

じっと耳を傾けてくれている蒼大さんと目が合う。


「ずっと傷つけた人に謝りたくて後悔してた。前にも進めないし、本当にごめんなさい。」


頭を下げて謝った。

蒼大さんが許してくれるかは分からない。

でも謝りたかった。