「別の相手?」


低い声を吐き出す蒼大さんを無視して、逃げてきたビーチに引き返す事にした。

逃げてても仕方ないし、彼らも別の相手を見つければ済むだけだし。


「波、音、ビーチに行こ?ほら、別の相手を見つけるんでしょ?」

「ちょっと花。」

「それとも観光に切り替える?ビーチは別の所にまた行けばいいし。」

「ちょっと花。蒼大さん、凄く睨んでる。」

「いいの。昨日、決めたじゃない。昨日の出来事は忘れようって。」


ビーチに向かって歩き始めようとしたが、その腕を掴まれ、後ろへと倒れそうになった。


「きゃっ、ちょっと。」

「話がある。波ちゃん、音ちゃん、昨日のビーチ?後から行くから、悪いけど春馬、悠祐と先に行ってて?」

「はっ?悪いけど、ナンパなら他を………。」

「春馬、悠祐、逃げられるなよ。」


私の言葉を遮り、蒼大さんが私を連れて歩き始めた。掴まれた腕を振り払うが、全然、振り払えない。


「花、絶対に離さないから。」


低い声を吐き出す蒼大さんが凄く怒っているのが伝わってくる。呼び捨てにされた名前からも怒りが分かった。