リビングに現れた蒼大の髪は濡れたままだ。

急いで上がったのか、まだ料理が完成していない。


「蒼大、早くない?」

「いや、ほら、一花が………。」


口ごもる蒼大を呆れた目で見た。

絶対に私が帰ってしまう……と思われた。

思わず大きな溜め息を吐いてしまい、蒼大の目が縋るように私を見つめている。


「帰らないから。」

「あっ、うん、だな。」

「私、蒼大と結婚するんだよ。帰ったりしないから。」

「そうだよな。」


嬉しそうに笑う蒼大がキッチンに立つ私を抱き締めた。

存在を確かめるように強く抱き締められた。


「一花。今のプロジェクトが成功したら、直ぐに結納でいい?」

「うん。」

「出来れば、その前に一緒に暮らしたい。」

「ふふっ、うん。」

「マジか?」


体を離して私を見下ろす蒼大が目を見開いて驚いている。

もう一度大きく頷いた。


「うん、いいよ。」


途端に抱き締められた。


「マジか!」


喜ぶ蒼大に私も嬉しくなった。