「今回も逃げた。だから逃げ道を塞いだだけだ。」


「…………。」


「それとも女に走るべきだったか?」


「別れるから。」


「だから一花の親に挨拶に行った。もう逃げられないように。」



蒼大さんが笑みを浮かべる。



「もう逃げられないから。」


「………。」


「一花と再会してから女とは切れてる。ちゃんと話もつけた。」


「………。」


「次に逃げたら………結婚だ。」


「はっ?」



逃げたら結婚?


元々、結婚は前提でしょ。


逃げたら結婚とか意味がわからない。



「一花、意味がわからない?」


「親には結婚前提だって。」


「一花は仕事を続けたいだろ?でも妊娠したら辞めてもらうけど。」


「妊娠………?」


「そう、妊娠。」



ニヤリと笑う蒼大さんに固まる。


つまり妊娠させるつもりだと言いたいのだろう。



「一花、次はないから。」


「………。」



悪魔の囁きが聞こえる。


頬から手が離れていく。それでも前に座る蒼大さんから目が離せないでいた。