二人でエレベーターを待っていれば、近づいてくる人影に春馬さんと目が合う。


「花ちゃん、蒼大が来るよ。」

「………。」

「蒼大、本当に花ちゃんが大好きみたいだし。俺らに花ちゃんの話ばかりするんだ。」

「………。」

「俺は行くよ。また次の会議で。」


春馬さんが私から離れていく背中を見送っていれば、蒼大さんが隣に立った。


「一花、俺の部屋に寄っていかないか?」

「えっ?」

「もうすぐ定時だろ。一緒に帰らないか?」

「えっ?いや、渡部さんが待ってるから。」


まっすぐ前を向いて話していた蒼大さんが私を見下ろしてきた。

突然、繋がれた手に離そうとするが、蒼大さんが強く繋いでいて離せない。


「岡崎部長、会社です。」

「そうだな。別に問題ない。」

「いやいや目立つから。」

「別に恋愛は自由だ。」


何を言っても聞かない蒼大さんに大きな溜め息が漏れた。

誰もいないエレベーターに乗り込んだ私を蒼大さんが抱き寄せた。


「一花、今日は一緒に帰ってくれ。」


懇願するような声に頷いていた。