「ここは…どこ?」

真由は、訳がわからない計器とボタン…そして、目の前に突き出している二本のアームに、囲まれていた。

「おはよう…真由」

突然、祖父の声がコクピット内に響き渡り、真由は耳を塞いだ。

「おじいちゃん?」

すると、計器の上…天井までが巨大なスクリーンになり、潤一郎のどアップが、圧迫感を持って、真由の目の前に、広がった。

思わず、仰け反る孫の反応に、少し気を悪くしながらも、画面内の潤一郎は、話し続けた。

「喜べ!お前は、選ばれたのだ」

潤一郎の言葉の意味がわからないが、一旦無視をして…真由は心配そうにきいた。

「足は大丈夫なの?」



「足?」

潤一郎は眉を寄せたが…すぐに足を見せ、

「怪我なんかしておらんが…」


その言葉に、唖然となった真由は…一瞬で理解した。

「また…あたしを騙して!今度は、何の実験なのよ!」


「実験とは失礼な!お前の場合は、体験させてやっただけだ。安全なのを選んで…。しかし…」

潤一郎は、画面上で視線を落とし、

「今回は…危ないかも…」

最後は、ぼそぼそと呟くように言った潤一郎の言葉を、真由は聞き逃さなかった。

「お、おじいちゃん!!」

「ヒイ」 

孫の鬼のような形相に、一瞬たじろぐ潤一郎。



「ターゲット…。生駒を降りました…奈良盆地に侵入!」

女の報告に、我に返った潤一郎は、白衣のポケットから懐中時計を取出し、

「もうすぐだな…」

フウと息を吐き出した。


「伊勢方面から、侵入したカブトムシは…太平洋に駐留していたアメリカ軍の空母を破壊した後、真っすぐに作戦ポイントに向っています」

「来たか…」

潤一郎は、笑った。

「カブトムシは…現代、伊賀上野上空を通過中!」 


「急がないといかん」

突然、真央の前の潤一郎の映っている画面が小さくなり、真っ暗な目の前の空間を見せ、

あと2つの画面が、コブラと、接近してきているカブトムシの影が映っていた。