ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)

 研究所との契約終了日。局長に事務局へ来るよう呼び出され、誰にも見つからないようにして事務局へと入った。

「フン、3分遅れか。まあいい、そこに座りたまえ」

と相変わらず無愛想な局長。言われるままソファに腰を下ろす。

(この人だけは好きになれないな)

と、ふてぶてしく歩いてきた局長が正面に座りながら、契約書類をバサッとテーブルの上に放り出した。

「わかっているとは思うが」

と言葉を切って、局長がジロリと睨んできた。

「これからはもう、一号機は、ミライは君のものだ」

「え、えっ、えっ?」

何ですって?今、何て言いました?

「何度も言わせるな。一号機は君の物だと言ったんだ。わかっとるんだろうな」

「ええっ???」

一体何がどうなってるんだ!何なんだこの変わり様は!

「どうした、何も聞いていなかったのか?一号機は君に任せる事になったのだぞ」

「ええっ!ホントですかっ?」

信じられない!そんなセリフが局長の口から聞けるなんて!

「知らんとはおかしいな、先週話しておいた筈だが…」

聞いてませんよ、そんな話。

「誰に話したんですか?」

「所長にだよ。君に伝えてないのか」

聞いた瞬間、脳裏にニヤリと笑う所長の顔が浮かんだ。あの人ならやりそうなコトだ!

「所長は、所長は今どこにいるんですかっ!」

身を乗り出して尋ねた。

「ああ、今は所員たちと一緒に研究室で君を待っていると思うが、」

「わかりました、ちょっと先に行ってきます!」

と勢いよく立ち上がり、呼び止める局長を振り切って事務局を飛び出した!