ふたりの彼女と、この出来事。（旧版）

「今、ここで再起動したら、ミライはきっと君の動揺を見抜くよ。そして君になぜかと尋ねる。そうなったら君は答えなくちゃいけないんだ。もうすぐお別れなんだよって。それを聞いたミライはどうなると思う？」

ミライと別れなければいけない。そんな事を話したら、

「動かなくなるかもしれない…」

悲しみのあまりに。

「そうだよ…。ボクだってミライは大事なんだ。ミライを動作停止させるワケにはいかないんだ。ロイの時は幸い上手く再起動したけど、もう一度上手くいく保証はない。そんな状況は絶対に避けなきゃいけないんだよ。今ここで再起動することがその結果を招くとしたら」

と、じっと僕を見つめてくる所長。

「まさか所長、本気で…」

初期化してくれって言うつもりですか！

「タイミングは今しかないよ」

所長の目がピクリとも動かなくなった。とゆっくりと口を開く所長。

「再起動するか初期化するか。どちらを選ぶかで、確実に『みらい』が変わるんだよ」

何て重々しい言葉だろう。どちらにしたって明るい希望は見えてこない。

「所長、何とかならないんですか？ホントにそのどちらかしかないんですか？」

藁をも掴む気持ちで縋りついた。と、しばらくじっと考え込んだ所長が、おもむろに口を開いた。

「…そうだね、セーフモードである限りは別に今日じゃなくていいんだ、どちらを選ぶか決めるのは。しばらくこのまま考えてみよう。一番妥協できる、最善の策をね…」

と腕を組んでじっとミライを見つめる所長。漂う雰囲気は変わらず重苦しいままだ。

（三月で終わりって事は、もうどうにもならないのか…）

やがて訪れるのか、すべてが白紙に戻る時が。