「ゴメンなさい先生、プレゼントなんにも用意してなくって～」

とダウンライトの明かりの中で肩を窄めてみせる広海君。

「ああいいよ、僕もだから」

まさかこんな事になるなんて思ってなかったからね。

「帰りにお酒買って、ちょっとお祝いしない？」

とカウンターに肘をついて体をくねらせる広海君。

「そうだね」

と頷いて返した時、マスターがスッと寄って来た。

「持ち帰り用のチキンも用意してますが、いかがですか」

とマスターの渋い声に広海君がすぐ反応した。

「ホント？」

横からでも目が輝いてるのがわかる。

「ええ。ワインや地ビールもありますので、良ければ」

と答えるマスターに、広海君がグッと身を乗り出して返した。

「ねぇ、チーズもある？」

「ありますよ」

と頷くマスターに笑顔を輝かせる広海君。これは買って帰らなければ。

「じゃあ、チキンと地ビールと、チーズを見繕って貰えますか」

「はい。お待ち下さい」

と振り返るマスター。

「ここは僕が払うよ」

ささやかだけどプレゼント代わりに。と、広海君がニコッと笑みを返してきた。

「ありがとう」

ダウンライトの明かりの中に浮かぶ、久しぶりに見る素直な笑顔。やっぱりかわいいよ、広海君。