ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)

「ミライに言ったんです。テレビに出たらミライを取り囲む人が増える。そうなったらどこにも一緒には出掛けられないよって。ミライは寂しそうにしてました。僕だってそうなんです」

大学の実験室に一人寂しく居たくないんですよ、所長。

「それはダメだよ」

と首を振る所長。

「えっ、えっ?」

ダメ?ダメって?

(何がダメなんですか?)

と戸惑っていると、所長が笑顔で僕とミライの肩をポンと叩いてきた。

「二人ともそう思ってるなら、外へ出て行かないとダメだって言ってるんだよ」

と僕とミライを交互に見る所長。ちょっとちょっと待ってくださいよ。

「いや所長、だって外でマスコミやヤジ馬が待ち構えてるんですよ?そこへ出て行けって言うんですか?」

それは酷じゃないですか。と、所長がフッと目を閉じて返してきた。

「こういう状況はある程度は想定してたんだ。この研究を始めた時にね。マスコミに取り上げられて騒ぎになるんじゃないかってさ」

それがわかってるんだったら、

「じゃあ何でそんな事を、」

と言いかけた僕を押し止めて、所長がカッと目を見開いてきた。

「最後まで聞いてくれ!」

といつになく真剣な眼差し。

「ボクらはマスコミを否定してるんじゃない。むしろ肯定してるんだよ」

「ええっ!」

マスコミを肯定してるだって!?

(どうして!)

唖然としていると、所長がじっと僕を見つめてきた。