ふたりの彼女と、この出来事。（旧版）

　研究所を出ると朝にもかかわらず張り込んでいたマスコミがコメントを求めて付き纏って来たが、学内ではミライを連れていないせいか、ヤジ馬の学生にも取り囲まれずに教授室に入れた。

「いやあ大騒ぎだな」

と入るなり、座っていた教授が顔を上げて声を掛けてきた。

「ええ、大変ですよ、何処も彼処も」

マッタクおかげさまで。

「海外のメディアでも取り上げられていたな。いよいよ話がワールドワイドになって来たじゃないか」

と嬉しそうな教授。イイですね見てるだけの人は。

「これ以上ゴタゴタが大きくなって欲しくないですよ」

正直もうウンザリです。

「悪いが、それはムリだろうな」

と、教授が鼻メガネの奥の目を輝かせた。

「新聞の社会面や政治面から、海外の科学雑誌に至るまで、あらゆる所で話題に取り上げられている。ネット上も然りだ」

と背凭れに身体を預けて続ける教授。

「世界中が知りたがっているんだ。君とミライ君の事をな。君たちはもう、一級の有名人という訳だよ」

いやそんな、知らないトコロで勝手に有名人に持ち上げられても。

「これからは、ますます覚悟して振舞う事だな」

と一つ大きく頷いてみせる教授。トホホ、内に外にと、面倒な事になったもんだよ…。