ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)

「自分だけじゃなくて、ロイまで僕の手の届かない所へ連れて行こうっていうのか、クワン…。そんなにロイがいいのか、クワン…」

俯いたまま、握り締めた拳を震わせる本田君。

(本田君、ひょっとしてクワンを…)

顔を伏せる本田君の気持ちを推し量った。

「ねぇ、お見舞いに行きましょうよ、クワンさんの」

とミライが心配そうに声を掛けてきた。

「あ、ああ、そうだね」

どこの病院か尋ねようとした時、本田君が急に立ち上がった。

「病院には行かないでくれませんか!」

「えっ、どうして?」

驚いて聞き返した。

「あんまり動き回らないで欲しいんです」

と本田君。

「どうして?」

それはまたどういう理由だろう。

「ええ、ロイの事は知られてしまいましたが、ミライはまだ世間には知られてはいません。周りにはロイの事を聞きつけたマスコミが溢れています。もし今、ミライの事まで嗅ぎ付けられてしまったら、収拾がつかなくなるに決まってますよ」

と首を振りながら止めに掛かってくる本田君。

「そうか」

呟いてミライを見た。ミライの事が知られたら、確実に僕の実験室にまで騒動が広がってくる。

「それに見舞いに行ったって、クワンはもう何も応えてはくれないんです…」

と悲しげに呟く本田君。力なく肩を落とした姿を見せられては何も言い返せない。

「いろいろと落ち着くまで、今は自重していてもらえませんか」

そう懇願する本田君に、頷いて返した。

「良かった。そうだ、控え室に行きませんか。コーヒーぐらいお出ししますよ。インスタントですけどね」

と笑みをこぼす本田君に微笑み返して、後について控え室に入った。