カツカツカツカツ…

「あのさぁ次期社長を独り占めする気?」

めずらしく麗華さんが私よりも早く来てると思ったら何?

挨拶もなし?

いちお年齢的には彼女の方が老けてるけど

入社した年は同じで

ちょうど1年くらい前の春のことだった

「おはようございます」

私は麗華さんよりも遅く面接会場に着いたので

先に着いていた麗華さんにあいさつをした

「あ♪おはようございます♪」

にこやかな笑顔であいさつしてくれた

私の麗華さんへの第一印象は

『美人で裏表なく優しい人』だった

私は緊張でお腹が痛くて

面接が終わってからトイレに行った

麗華さんの声が聞こえる

お友達と一緒に化粧直しに来たみたいだった

私は1番手前側のトイレに入っていたから

たまたまその話し声が聞こえた

「ねぇ麗華~!面接余裕~?」

如何にもって感じのコギャルの声だった

麗華さんにもこんな友達がいるってことに

私は少し驚いた

「え~!麗華だよ~?バカにしてんの~?」

さっきの面接前に私が聞いた声とは全然違った

麗華さんもギャルなのかな?

私はまだ確信が持てなかった

「面接のライバルは~?どんな感じ~?」

私ココにいるんですけど~!!

な~んちゃって♪

私のことを

なんて褒めてくれるんだろう?


たとえコギャルに話を会わせてたとしても

私のことをバカにすることはないでしょ?

「え~っとねぇ…余裕です~♪」

え?

今なんて??

麗華さん??

なんで?

麗華さんってこんな人だったの?

優しい人なんじゃなかったの?


それ以来私は麗華さんと

少し距離を置きながら関わるようにした


そのまま今に到っている

知らないわよ?

「私はただデスクが隣だから教えてるだけなんです」

ちゃんとした言葉で応えた

「へぇ~そうなんだ♪じゃあ勘違いだったね、ごめんね~♪」

やっぱりあの面接の日の麗華さんの裏を見たら

全ての動作が

人工的に操っているものだとさえも

思えてくる

そしてそのまま

なんか昴くんに話しかけようと思っても

麗華さんからの視線がこわくて

ココ数日間話せてない

昴くんからも話しかけてくれてるんだけど

麗華さんが妨害しにやってくるんだもん!

そして今日朝から

珍しく課長からの連絡

「澄川と綾瀬のデスク交代をする」

え?今なんて?

綾瀬?

綾瀬ってあの悪女麗華?

なんで?

なんの理由があって交代するの?

麗華さんと私が交代?

朝来て早々の大問題発生!

でも私に反論する権利はあるはずもなく

ただ黙ってその大問題に直面するしかない

「では交代しておくように」

課長もう最っ低!!

そして私達のデスクは交代した

デスクの中の荷物を全部出して

1回では運びきれないくらいの大量の荷物

入社したばっかだったときは

こんなに荷物は多くなくてこの半分以下だった

こんなに荷物が増えたのは最近のことで

女子力グッズができたから。

あーあ

やっぱ意味ない

私なんかが社長とうまくいくはずないじゃん

浮かれてた

麗華さんとすれ違うときに

やらしい顔をして麗華さんは通りすぎて行った

"もしかして全部麗華さんが仕組んだこと?"

とさえも思えてくるほどあっけなく

私と昴くんとの楽しい仕事タイムが終わった