あたしは弘樹に説教をされるために来ているワケじゃないんだ。


そう思いあたしは強引に弘樹の唇の自分の唇を押し当てた。


まだ少しは嫌悪感が残っている。


でもこの後増えて行くお金の事を考えると、それもだんだん気にならなくなる。


昨日と同じようにたっぷり1分間ほど唇を合わせると、弘樹は荒い呼吸を繰り返し始めた。


「ごめん、ちょっとトイレ」


そう言ってそそくさと部屋を出て行く弘樹。


興奮した弘樹に襲われるのも嫌なので、あたしは素直にその後ろ姿を見送った。


そしてテーブルの上に置かれた複製機へ視線を向ける。


銀色の箱をそっと撫でた。


ただの箱なのに強い愛しさを感じる。


弘樹がトイレに行っている間に持って帰ってしまえばいい。


そんな誘惑が首をもたげて来る。


複製機を両手で持ち上げた時、トイレのドアが開閉される音が聞こえて来てあたしはテーブルの上に機械を戻した。