それは有名アーティストのシングルで、あたしも持っているものだった。


「試にこれを複製してみる?」


そう聞かれて、あたしは頷いた。


普通CDをコピーするのに必要なのはパソコンなどの電子機器だ。


けれどこの箱にはそんなものが搭載されているようには見えなかった。


弘樹は複製機の箱を空けて、その中にCDを入れた。


箱の中はなにもない、ただの空間が広がっているだけだった。


手のひらサイズの箱の中にCDがスッポリと収まった。


CDの方が大きいと思っていたあたしはそれだけでも驚いてしまう。


驚いているあたしを横目に、蓋を閉めて赤いスイッチを押す弘樹。


すると箱から微かな機械音が聞こえて来た。


それは静かな部屋によく響く。


「1分くらいで出来上がるから」


「そんなにすぐに?」


あたしは眉を寄せてそう聞き返した。