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それからあたしは弘樹をひと気のない渡り廊下へと呼んだ。


ここは部室棟へと続く渡り廊下だから、今は生徒の行き来がなかった。


「話ってなに?」


顔を赤くしたままの弘樹がそう聞いて来た。


「昨日の話の続きなんだけど」


「えっと、なんだっけ?」


「複製機の話」


そう言うと、弘樹が「あぁ、あれか」と、頷いた。


嘘なら少しは慌てるだろうと思っていたけれど、弘樹の声のトーンに変化はない。


見た目にも、焦っている様子はなかった。


「本当にあのぬいぐるみも1万円札もコピーされたものだったの?」


「そう説明したはずだけど?」


弘樹は自信満々にそう言い切った。