「あぁ……。そうだよね。でも、弘樹はいつもお小遣いの範囲内でやりくりしてた人なんだよ。

お爺さんが亡くなってお金が入って来たとしても、あんなに急変するなんてあたしには考えられない」


柚香の言葉にあたしは横目で弘樹を見た。


弘樹の周りには沢山のクラスメートたちが集まってきている。


あんな光景、1学期では見られなかった光景だ。


「柚香は、弘樹の変化には他になにかキッカケがあったと思ってる?」


そう質問のすると、柚香は大きく頷いた。


「絶対にそうだよ。関係があるかどうかわからないけど、1つ気になることもあるし」


「なに、それ」


ナオが興味を示したように柚香へ向けてそう聞いた。


「お爺さんの遺産の他に、形見になる物を貰ったって言ってたの。


片手に乗るくらいの小さな箱で、『これ、ただの箱じゃないんだってさ。使ってみて面白かったら柚香にも貸してやるよ』って言ってたの。だけど弘樹はそれ以来その箱についてのことを話そうとしないの。


使ってみたのかどうか質問しても、いつもはぐらかされる」