「あれ……」


弘樹がこちらに気が付いて驚いた顔を浮かべた。


ここで逃げるのもおかしいから、あたし達も偶然を装って驚いたふりをした。


「偶然だね弘樹」


あたしがそう言うと、弘樹はクラスで見せるいつもの笑顔を浮かべた。


「本当だな。2人で買い物か?」


「そうなんだよ。弘樹は? もしかして彼女と一緒?」


あたしはキョロキョロと周囲を見回してそう聞いた。


「いや、俺は1人。そもそも彼女とかいないし」


そう言ってつまらなさそうに唇を尖らせる弘樹。


弘樹の言葉にあたしとナオは一瞬顔を見合わせた。


なんでそんな嘘をつくんだろう。


そう思うけれど、周囲に彼女らしき人はいないから、何も言えなかったのだった。