本当に欲しかったものなら、あんなに簡単に興味を失ったりはしない。


結局のところ、持っていないもから欲しかっただけなのだ。


それはあたし自身が一番理解していた。


だから今はナオからもらわなくてよかったと思っている。


あの時無理やりナオからぬいぐるみを貰っていれば、きっと陸人にも嫌われていただろう。


「あ、弘樹いた!」


ナオの声に現実に引き戻される。


確かにあたしたちの前方からこちらへ向けて歩いてくる弘樹がいる。


けれど、弘樹は1人だった。


「相手の子は?」


あたしが聞くと、ナオは左右に首を振った。


弘樹の横にも後方にも、あたしにそっくりな女の子なんていなかった。