「そのペンって、購買とかに売ってるやつじゃないよね」


少しでも自分の気をそらすためにそう聞いた。


「あぁ、これ? ペンっていうか万年筆だよ」


そう言って弘樹は見せてくれた。


プックリと膨らんだその万年筆は濃いブルーをしていた。


光の加減によって青く見えたり、黒く見えたりしてとても綺麗だ。


「すごいね、万年筆なんて持ってるんだ」


「買ったばかりだよ。まだ全然使ってないんだ」


そう言って弘樹は照れたように笑った。


そう言えば昨日は新しい運動靴の話でも盛り上がっていた。


万年筆だって、普通のペンに比べれば高いんだろう。


「欲しい?」


弘樹にそう聞かれたので、あたしはブンブンと左右に首を振った。


本当はほんの少しだけ興味はあった。