「陸人、座って」


あたしがクッションを差し出すと、陸人は困った表情のまま腰を下ろした。


「俺、なんでここにいるんだっけ?」


「今日はあたしの家に泊まるって言ってたでしょ?」


あたしは適当な嘘をついた。


複製された人間には状況の説明が必要な様子だ。


弘樹が最後に言いかけた言葉はこれだったのかもしれない。


人間を複製するたびに適当な嘘をついて説明するのは、少し面倒だ。


「そうだっけ?」


「そうだよ。久しぶりだね、陸人があたしの部屋に来るの」


「そうだな。何年振りだろうなぁ」


陸人はそう言ってあたしの部屋を見回した。


普段から綺麗にしておいてよかった。


「マキの匂いがする」


「なにそれ」