☆☆☆

生徒の少ない場所に移動してきた時、柚香が立ち止まった。


「話ってなに?」


「質問なんだけどさ……。マキは弘樹と付き合ってるんだよね?」


その質問に盛大なため息をつきそうになってしまった。


柚香も勘違いしていたようだ。


「付き合ってないよ」


そう返事をすると柚香は驚いたように目を丸くし、そして嬉しそうに口角を上げた。


「それ、本当に?」


「本当に本当。どうしてそんな風に勘違いしたの?」


「だって、放課後いつも一緒にいるって色んな子が言ってるし。今日はなんか弘樹の様子がおかしくて、マキがなにか事情を知ってればなって思ったんだけど」


弘樹の様子がおかしいのは当然だろう。


あたしが昨日複製機で頭を殴りつけたからだ。


弘樹はあたしとちゃんと会話がしたくて仕方がないことだろう。