【お調子者の同級生】


 直接チョコを渡せたら良いんだけど。みんながみんな、そんな勇気があるわけじゃない。そんな可愛いことが簡単にできる性格の子ばかりでもない。

 わたしはできない部類の人間。
 昔から、みんなを楽しませることだけを考えて、どんな場所に放り込まれても、へらへら笑って過ごして来た。

 そんな、お調子者のイメージがついてしまったわたしが、ただでさえ人気者のあいつに、チョコなんて渡せるわけがない。そんなことをしてしまったら、きっと卒業まで笑い話にされてしまう。

 だから昼休みに入るとすぐ、昇降口まで全力疾走して、彼のげた箱にチョコを放り込むことにした。わたしからだとばれないようにイニシャルしか書いていないけれど、渡したことに変わりはない。

 汗だくで昇降口に辿りつき、げた箱を開ける、と。ばらばらと、チョコがこぼれてきた。直接渡せない同志たちがこんなにたくさんいたのか。

「仲間仲間」

 呟いてふっと笑って、こぼれたたくさんのチョコと、自分のチョコを、彼のげた箱に押し込んだ。