【下駄の音】


 彼女は待ち合わせに遅刻するような子ではない。しかも今日は楽しみにしていたお祭りの日だ。

 浴衣を着ると言っていたし、着付けに手間取っているのかな、と思ったとき。冷たい風がびゅうと吹き、どこからかカランコロンと下駄の音が聞こえてきた。

 ようやく来たかと顔を上げたけれど、そこには誰もいなかった。