【紙をくれ】


 何度トイレットペーパーを投げ入れても、個室の中から「かみをくれ」という声がする。

 不審に思って恐る恐るドアを開けると、中には誰もいなかった。そして「この紙じゃない、おまえの髪だ!」と便器の中からにゅうっと手が伸びてきた、が、残念。僕はスキンヘッドだ。

 手はおずおずと便器の中に戻っていった。