「ばあちゃんの旦那さんは昭和三年三月三日生まれで。
出生届けを出すのが遅れて、紙の上では八日生まれになってるけど。ばあちゃんから見て、お前の父さんみたいな人だったよ」と祖母は言った。
「短気で、意地が強くて。自分の我を通して人の言うことを聞かない人だった」
それを聞いた僕は、確かに父さん(つまり祖母の長男)にそっくりだと思った。
「若い頃、青年団に入っていた頃にお酒の飲み過ぎで胃を壊してね。タバコもかなり吸っていた」
それ以前から胃の弱い人だったというのは、前に祖母から聞いたことがあった。
「昭和三十一年ころの冬、一月十八日に胃を全部取ったんだけど、同じ頃にばあちゃんは骨盤腹膜炎で入院する事になってね。その間、お姑さんはまだ幼かったお前の父さんや叔母さんの面倒をみてくれなかったの」
そのためにそれからしばらく、父さんや叔母さんは、祖母の実家である福永家へ預けることになって、祖母の妹が特によく面倒を見てくれたという。



