10.ずっと会いたかった人


ヒロとカスミを残して帰った翌朝。

朝、教室に入ると既にヒロは座って本を読んでいた。

「おはよう。」

ヒロの横顔に小さな声で挨拶した。

ヒロはちらっと私を見上げて、「おはよう。」とこれまた小さな声で言った。

あれからカスミとはちゃんと話できたのかな。

部活以外の話でも盛り上がったりしたんだろうか。

いやいや、そんなことはどうだっていい。

カスミは部活に乗り気だったけど、ヒロの話を聞いて、やっぱり入るのが億劫になったりしてない?

ヒロの横顔に聞きたいことが山ほどある。

でも、相変わらずすました顔で本を読まれてると、なんだか聞いちゃまずい?って気になるし。

っていうか、私は唯一の部員なんだし、昨日の報告は普通ヒロからすべきじゃない??

一時間目の用意をしながら、気持ちは落ち着かなかった。

そうこうしている内にカスミが教室に入ってきた。

カスミに聞けばいいか。

それもどうかと思うけどさ。

「おはよう。」

努めて明るくカスミに挨拶をする。

何に対してこんなに気を遣ってるのか自分でもよくわからないけど。

「あ、ああ」

カスミは私を一瞥すると、すぐに目を逸らしてなんだか気まずそうな顔をした。

あん?

何?

まずは昨日のお礼でしょうが。

っていうか、ヒロもカスミもなんだか変。

私に対してすごく愛想ないっていうかさ。

どういうこと?

昨日、何かあったわけ??