アオイとの時間を長引かせるために提案した仮眠だったが、時間も遅かったせいか、食後になるととてつもない睡魔がマサを襲った。帰り道はまだ二時間以上もある。とても運転できる気がしなかった。

「まずいなー。本格的に寝たくなってきた」

「でも、民宿やリゾートホテルはどこも予約でいっぱいだって……」

 ファミレスを出ると同時にスマホ検索していたアオイは、困ったようにマサを見つめた。

「だよねー。悪いけど、車の中で少し寝てってもいい?」

「う、うん、もちろんだよ」

 ファミレスの駐車場で、マサは仮眠のため座席を倒そうとした。そこでアオイはストップをかけた。

「マサ待って。あそこ!」

 アオイの指差した先には、ショッキングピンクを基調とした紫ネオンの放たれる独特の建物があった。夜だからこそ主張の強いその建築物が何なのか、マサにもすぐに分かった。

「ラブホ!? 俺は助かるけどアオイはさすがにまずいでしょ」

 一応気を遣って既婚者への配慮をしてみたものの、それは自分にとっても本気でまずいとマサは思った。アオイは全くこちらを異性と意識していないのだろうがこちらは違う。

 相変わらず車内に満ちる彼女の甘い匂いにクラクラするし、半裸のユミには欲情しなかったのに服をしっかり着て行儀よく隣に座るアオイからはとてつもないエロスを感じてしまう。服の下の、水着の時にも見られなかった部分はどうなっているのだろうと何度想像したことか。